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まどろみさん 1st

カスタネッツでデビュー後の1996年、ある雑誌にコラムの連載をさせてもらえることになった。
そこで張り切って書いたのが、「まどろみさん」でした。

なぜ、デビュー後の世間様へのお披露目時期にいきなり「まどろみさん」だったのか。
私にももはや分からない。
その雑誌名も思い出せないし、内容も定かではない。
その後、カスタネッツの会報誌に続編を書き、さらに知人が発行していたフリーペーパーに続々編を書いた。
ただただ漂い生きるまどろみさんに己を見つつ、応援しつつ、楽しく書いたものだ。
続編、続々編は原稿が残っているので、それぞれ2nd、3rdとしてアップしてみます。
カテゴリから「創作」で検索可能です。

暇つぶしにいかがかな。

1stは手元に原稿なし。
誰か、記憶していたらコメント欄にでも思い出し記入してみてくださいな。

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ヤヤッ、オイラを呼んだかな?

ヤヤッ、オイラを呼んだかな?
まどろみさん研究の第一人者、「木を見て森を見ぬ男」と呼ばれるこのまどろみ小僧が、まどろみさんの第一話、思い出し記入しちゃうぜよ。
■まどろみさん 第一回 1996/6
杉並区にも春が来た。
私はベランダに出て軽くまどろみながらタバコをふかしつつ想いをめぐらせた。
『春が来たのかぁ。へえー春がねぇ』
同居猫のジェットが喉を鳴らしながら近づいて来て、私の足の小指を噛んだ。
「いくら噛んでもいいよ。その指はいらないから」
ジェットは何故か「我が意を得たり!」といった顔つきになってハフハフ言いながら私の足の小指にかじりついた。
そんな様子を見ているうちに私はなぜかうっとりしてしまい、そしてなぜか一首詠んでしまった。
「かじりつく ネコの目ヤニに 春うらら」
「おみごと!!」
と言いながら隣の部屋のベランダに隣人のイナナキさんが出てきた。
「相変わらず見事な詠みっぷり。参りました。」
彼はそう言って私の目を見つめ、なぜかニヤついた。
私は突然褒められ、その直後にニヤつかれてしまった事に大いに動揺し思わず叫んだ。
「ざっくばらんにいきましょうや!」
彼は一瞬ひるんだが、すぐ落ち着きを取り戻して明るく言った。
「ところで、だいぶかじってますよ」
私が自分の足元を見ると、ジェットは私の小指の肉をほぼ食べ終わり、剥き出しになったちっぽけな骨をガリガリかじっていた。
「ずっと前からこの小指ってやつが邪魔でね。 ぶつけると痛いですからねぇ」
「まったくです」
彼はうんうん頷きながら言った。
「それにしてもまた、春が来ましたねぇ」
「えぇ」
私達はしばし黙って春を感じた。
ネコのジェットはようやく骨をかじり終え「クフン!」と鼻を鳴らすと部屋に戻って行った。
イナナキさんも大きく息を吸い込み一声いななくと、「それじゃ」と言って部屋に戻って行った。
私は新しいタバコに火をつけ軽くまどろんだ。
頭の中に様々な春の記憶が浮かんでは消え、浮かんでは消え、そのたびに私は喜んだり悲しんだり、高ぶったりひれ伏したりした。
『春が来て夏が来て秋が来て冬が来て、そしてまた春が来る』
私はありがたいような空しいような気分になり、困り果てて叫んだ。
「どうしろって言うんじゃい!」
そしてここ数年、春が来るたびに同じ様に叫んでいた事に気がついた。
『春は僕を慌てさせる。春は僕に何かをさせたがる。でも僕は何をすればいいんだろう。それが分からない』
私はただ頭を振り続けた。
その時「ピンポーン」と私の部屋のベルが鳴った。
ドアを開けると男が一人立っていた。
男はスゥーと息を吸い込み、その息を一気に吐き出しながら言った。
「N○Kの者です。とにかく受信料をください。」
私はN○Kは見ないので払ったことがなかった。
しかし目の前の男はそう簡単に引き下がってくれそうもなかった。
自信に溢れた態度は、男がプロ中のプロである事を示していた。
『出会った中で最強のN○K職員だ。負けるかもしれない。だが俺は戦う!』
春の迷路をさまよっていた私の心に急速に力が沸き上がるのを感じながら、私は戦いの中に飛び込んでいった・・・・・・。

ヤヤッ、またオイラを

ヤヤッ、またオイラを呼んだね?呼んだよね?
「飛んで火に入る夏の虫」と呼ばれ続けて久しい男、まどろみ小僧がご丁寧に第二話も思い出しちゃおうかな。
あーらよっと。
■まどろみさん 第二回 1996/7
杉並区にも梅雨が来た。
私はベランダに出て体の右半分を生暖かい雨に打たせながら軽くまどろんでいた。
すると下の小道から「まどろみさ~ん」という女性の愛らしい声がした。
私は「ハッ!」と声高に叫びベランダから身を乗り出して下を覗き込んだ。
そこには赤いカサを差した女の子が立っていた。
近所の居酒屋“おっちゃんの店”のアルバイトの子で、いつも元気なので“グリコちゃん”と呼ばれている子だった。
「半分だけビショビショにして何してるの?」
と彼女は愛らしい声で聞いた。
私は何故かギクリとして「いやぁなんのなんの」等とボソボソ言った。
彼女は「ふ~ん」と言い、続けて「最近飲みに来ないね」と言った。
私は慌てて
「すぐ行く今日行くきっと行く!」
と叫んで我知らず十字を切った。
彼女はニッコリ微笑み(非常に愛らしく)
「待ってるね」
と言って歩き去った。
私は彼女が見えなくなるまで見送っていたが、ふと左半身まで雨に打たれてる事に気が付いて急いで部屋に戻った。
「あぶなくズブ濡れになる所だった」
私は濡れた体をネコのジェットに擦り付けながら、彼女の事を思った。
2週間前に“おっちゃんの店”に行きボンヤリとビールをすすっていると、彼女が隣に来て言った。
「まどろみさんていつもボンヤリしてるんですね」
私は妙にスナオな気持ちになり、
「そーなんですよ。こんなにボンヤリしててバチが当たらなきゃいいんだけど」
と答えた。
彼女は「大丈夫ですよ。まどろみさんは、ボンヤリしているのが似合ってますから」
と優しく言って、目玉をクリッと(非常に愛らしく)動かした。
私は一気に肩の荷が下りた気分になり、そのせいか勢い良く跳ね上がりながら言った。
「グリコちゃんはいつも元気だね」
「よくそう言われるんだけど、元気だから偉いって訳でも正しい訳でも無いし。
ただあたしは元気にしている方が楽なだけなんですよ」
そう彼女は言うと、元気良くビールのタルを担いで店の奥へと入って行った。
私はその時の彼女のセリフを思い出し、我知らず
「元気だからなんだってんだい!」と叫び、「てやんでい」と呟いた。
そしてその時私は、はっきりとグリコちゃんが大好きになってしまった事を意識し、はにかんだ。
ネコのジェットは、びっしょり濡れて半分位の大きさになってしまったが、おかげで私の体はすっかり乾いてしまった。
「雨が止んだらグリコちゃんに会いに行こう。大好きになったと言いに行こう」
それまで絵でも描いていようと、私はスケッチブックにグリコちゃんの絵を描いた。
赤い短い髪と白い小さな耳がうまくいった。
夜半頃ようやく小雨になり、私がおっちゃんの店に駆け付けると、グリコちゃんは、ごつく軽薄な4WD車の助手席に元気良く乗り込む所だった。
運転手の若者は、どうしようもない程元気そうな男だった。
元気な二人を乗せて車は元気良く走り去り、私はおっちゃんの店に入りおっちゃんに言った。
「おっちゃん、僕にも元気くれ。」
おっちゃんは「ヘイ、元気一丁」と言って私の前に生卵を2個置いた。
私はそれを有り難く飲み干し、おっちゃんに尋ねた。
「雨はいつ頃止むのかね」・・・・・・

あぁ忙しい忙しい

ヤヤッ、呼ばれてなくても登場しちゃう、そんなオイラに誰がした?
「永遠の自転車操業」に精を出す男、まどろみ小僧が、第三話の思い出しにチャレンジだ。
この回から、シュール度が痛くなってくるんだよねぇ。
そーれ、オッペケペっと。
■まどろみさん 第三回    1996/9
杉並区にも秋が来た。
私はベランダに出て、ネコのジェットと共に秋空を眺めていたが、ベランダの隅に積んであるレンガの上に奇妙な物体を見つけ、
「オゥ?」と囁いた。
それは10cm程の真っ青なキノコであった。
「何だろ、これ」と思ったとたん、隣人のいななきさんが私の部屋に飛び込んで来て
「こっ、これは、ポジティブマッシュルームですよ!」
とイナナいた。
いななきさんの突然の乱入に、おののきわななく私を尻目に彼は明らかにコーフンしながら続けた。
「このキノコは日本では〝あばれしめじ〟と呼ばれる幻のキノコで、食べると反省や後悔といった精神状態がストップして、怖いもん無しの前向きバカといった状態になるのです。
勝ち上がるだけのゲームのような人生を生きる現代人には、夢のパワーアップアイテムなのですよ。ハイ」
そこまで一気にイナナくと、今度は明らかに物欲しげな様子で
「うーん羨ましい、妬ましい」を連発した。
私が「私はこのキノコをあなたにあげないです!」とおごそかに宣言すると、
「うーんいまいましい、口惜しい」を連発しながら私の部屋を出て行った。
私は部屋のドアにカギを掛け、そのキノコをレンガからもぎ取って観察した。
「〝あばれしめじ〟ねぇ。」
私は自分がそのキノコを食べ、真っ青な顔色の大男になって好き勝手に大暴れしている様子を想像した。
最初のうちこそ面白かったが、すぐに飽きた。
それにこんなキノコごときのせいで人生を変えてしまうのは、今まで出会った人や本や歌や世界に対して申し訳ないような気になった。
『どうやら僕にはこのキノコは必要ないなぁ。』
私はそう思い、トイレに捨てて流してしまった。
そのとたんドアを激しく叩く音がした。
窓の外にも大勢の人の気配が感じられた。
ベランダに出てみると私のアパートの周りを何千人もの人が取り囲み
「キノコを奪え!」
「キノコが欲しい!」
と叫んでいた。
遥か彼方でいななきさんが、
「キノコはあそこ、あそこにキノコ」
とイナナいている。
「キノコはもう無いです。無いのですよぉ」
と訴えたが、人々は全く聞いていなかった。
「バリバリッ」とドアが破られ、狂った人々が部屋に乱入して来た。
ジェットの眼が緑色に光り、乱入者達に襲いかかった。
先頭の何人かが首筋をかき切られ倒れた。
人々はさすがにたじろいだが、入口で立ち止まったまま
「キノコ!キノコ!」
と叫んでいる。
外の群衆の数も益々増え、何万人にもなっているようだった。
私は〝もはやこれまで〟と思い、ジェットを抱いて最後のまどろみをしようと煙草に火を付けた・・・。
煙草一本分のまどろみから私が目を覚ますと事態は一変していた。
外から聞こえていた「キノコ!キノコ!」という声は「サノヨイヨイ!」と言う合いの手に変わっていた。
驚いてベランダに出てみると、何万人もの人々が好き勝手に踊っていた。
どうやらコーフンした集団意識がピークに達し、原始的『ハレの日』意識が発生してお祭りになってしまったようであった。
「オッショイ!オッショイ!」という元気のいい声が秋空に広がっていた。
「ごらんよジェット。これが日本の秋だよ!」
私は感動して叫び、踊り狂う人々の中に身を踊らせた・・・。

いつでもオイラを呼んでくれ

ヤヤッ、何で呼ばないかなぁ、もっと。
「ほんのわずかに福耳」とは、オイラまどろみ小僧のことなんだぜ!
さぁ、最後に第四話、こいつを思い出したらみんなとはお別れだ。
寂しいけどイクゼ!オッケー!マリアンヌ!
■まどろみさん 第四回 1996/11
杉並区にも冬が来た。
私がコタツに首まで潜り込み「ゴッドファーザーのテーマ」を鼻歌で奏でながらまどろんでいるとドアが開く音がした。
朝から外出中だった同居猫のジェットが帰ってきたのだろうと思い、「おかえり、ジェット」と言いながら目を開けてみると、私の小さな玄関に女の人がジェットを抱いて立っていた。
緑色の別珍のワンピースを着て、クシャクシャっとした短い茶色の髪、そしてちょっとびっくりするぐらい黒い瞳の女の人だった。
女の人は黙ったままジェットを床に降ろすと、台所を突き抜け私のいる居間まで入ってきた。
私はコタツから首だけ出したまま激しくローバイした。
女の人は私の首を踏まないように気をつけながら部屋の窓を開けてベランダに出たり、本棚に並んでいるマリモの入った瓶を眺めたりした。
私は目を伏せていたので女の人の白い素足ばかりが目に付いた。
足の指は私と違って親指が一番長いようだった。
『俺は人差し指が一番長いんだぜ。』と思った。
すると多少落ち着いた。
私は身を起こした。
そのとき「よっこらしょ!」と言ってしまい、慌てて女の人の顔を見た。
別に気を悪くしてはいないようだった。
女の人は言った。
「この猫が住んでいるのはこの部屋ですか?」
私は女の人が「このネコちゃんが・・・」と言わなかったので内心嬉しくなってしまい「えぇ、そうですとも!」と、つい明るく言った。
女の人は小さく頷いて、そして黙って部屋を出て行こうとした。
私は慌てて尋ねた。
「別珍の服で猫を抱いたのに何で猫毛がくっついていないんですか!?」
しかし女の人はそれには答えず玄関のドアを静かに開けて出て行った。
「一体どうなってるんだ。どういうことなんだね、ジェット?」
私はジェットに尋ねたが、ジェットは長々と床に伸びたまま
「まぁまぁ、いいじゃんかよぉ。」
と言いたげにも見えるが
「『キテレツ大百科』が終わっちゃうとはなぁ。」
と言いたげにも見える顔をしてみせるだけだった。 
一時間ほど経った頃、またさっきの女の人が入ってきた。
買い物袋を提げていた。
私はもう完全にうろたえて叫んだ。
「何ですか一体!私はどうすればいいんですか!」
すると女の人は買い物袋から一本、ビールを出して栓を抜き私に無言で勧めた。
私は「わっ、ビールだ。しかもビンビール!」と、つい喜び勇んでしまい、コタツで飲み始めた。
女の人は黙って買い物袋から玉葱とジャガイモと人参と豚肉を出して刻み始めた。
私はビールを飲む手を止めた。
女の人は野菜と肉を炒め始めた。
私のビンを持つ手が震えた。
女の人は水を足して煮込み始めた。
私は我慢できずに絶叫した。
「カレーでしょ!?」
女の人は口笛を吹いてとぼけている。
三十分ほど経って女の人は鍋からジャガイモを一口取り出し、食べてから小さく頷いた。
私は「煮えたんだ!煮えたんだ!」と叫びながら踊りまわった。
女の人はニヤリと笑って、カレールーの箱を取り出した。
「入れるんだ!きっと入れるよね!入れるとイイな!」私は吠えた。
そしてついにカレーの匂いがあたりに立ち込めた。
「カレーじゃん。やっぱカレーだったじゃん。」
私は我知らず泣きながら呟いた。
女の人がカレーを三皿運んできた。
私とジェットと女の人が食卓を囲んだ。
女の人は言った。
「今日はカレーです。私の名前はケヤキです。」
私達は拍手し、そしてカレーを食べた。
猛烈な勢いでカレーを平らげながら
「ずっと僕はカレーを待っていたのかもなぁ。」と思った。
そしてケヤキに訊ねた。
「明日もカレー?」・・・・

ありがとう、まどろみ小僧さん。
確かにこんな感じだったと思います。
自分ではもっと美文だった気がしてたんだけど、気のせいだったんですね。
それにしてもまどろみ小僧さんの記憶力は凄い。
やっぱり微妙すぎるサイズとはいえ、福耳の人は違うなぁと感心しました。
プロフィール

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Author:マキノゲン
忘れた頃に更新っすよ。
忘れた頃に思い出してくださいな。

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