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まどろみさん 2nd その1


杉並区にも秋が来た。

私とジェットとケヤキは、夏モードのムキだしコタツに座って梨を食べていた。

この梨は、隣の201号室の住人、イナナキさんがジョギング中にどこかの家の庭に生えている梨の木からもいできたものだった。
今朝私の部屋に来て、「おすそわけだよ、まどろみさん」とイナナいて3個くれたのだった。

梨は大好きだった。
「どこの家の庭だろう」と私は考えた。
ジェットとケヤキを連れて深夜の梨狩りに行けたらなぁ。

ジェットも梨は好きみたいだった。
シャクシャクとかじりながら、時々むせて「カフッ」と言いながらも満足気だった。

この部屋の一番古い住人がジェットだった。
私が越して来てドアを開けると、何もない居間の真ん中で寝ころんでいたのだった。
黒に近い灰色の毛並でしっぽの先が白かった。
私は大抵いつもさびしいので、同居ネコがいるのはとてもうれしかった。
私は彼に近付いてひざまずき、「よろしくたのみます」と言った。
彼は目の色を急速に変化させて、「うん、まぁ一つよろしく」と私に伝え、「俺はジェット」と言ってあくびした。

ケヤキはジェットが連れてきた新しい同居人だった。
ある冬の日に外出していたジェットを抱いて現れ、カレーを作ってくれてそのまま住みついてしまった。
カレーには不思議な力があるのです。

ケヤキは十九歳らしい。
でも子供に見えたりおばあさんに見えたりする時もあった。
ほとんどしゃべらないケヤキはいつもちょこんと座って私を見てたり、
ころんと寝転んでジェットを見てたりしたが、私はケヤキの眼を見るとなぜかドキリとしてしまう。

ケヤキの眼は不思議なほど真っ黒だった。
まるで眼だけが生きてて、他の部分を動かしてると思うほど、生き生きとしていた。
さびしげな眼をしてる時は、どんどん縮んでいって消えてしまいそうに見えたし、
うれしそうな眼をすると、キラキラ光って爆発しそうに見えた。
ケヤキは茶色のクシャ髪でいつも深緑の服を着ていて素足だった。
ジェットはどうしてケヤキを連れてきたんだろう。

この部屋には電話もポストもないけれど、
私とケヤキとジェットは、この古いアパートの一室に溶け込んでいるように暮らしている。

家族でも恋人でもペットでもなく、僕らは空気みたいに混ざり合って暮らしている。

私は自分が生きていることを知ってるし、それがとてもうれしい。

何歳になったか、本名が何だったか、忘れてしまったけど、
私は「まどろみさん」と呼ばれていて、職業は「生活」です。

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